税と社会保険で異なる収入の考え方。~配偶者の扶養の判定~
みなさんこんにちは、滋賀県大津市の税理士・社会保険労務士の山本哲平です。
103万の壁とか、130万の壁とか、150万の壁とかって聞いたことがある方も多いのではないかと思います。
友人・知人等(顧問先以外の方)からの税金・保険の相談で一番多いのがこういった話です。
みなさんなんとなくは理解されていますが、話を聞いていると微妙に間違っていることが多いです。
この時期は4月の子ども進級・進学等に伴って、パート等を始めようかと検討されている方も多いと思いますので、間違った認識で失敗をしないように、そのあたりの説明をしたいと思います。
そもそも103万の壁とか、130万の壁とか、150万の壁とはなにかの説明から入りますと、これらは税および社会保険における配偶者の扶養の基準です。
103万円は所得税における配偶者控除、150万円は配偶者特別控除の適用の基準であり、130万円は健康保険・厚生年金の扶養の適用の基準です。
その金額の範囲内であれば、それぞれの制度が適用されることなります。
ここからが今日の本題です。
この103万円や130万円や150万円といった金額の「具体的の計算方法」をちゃんと理解している人は少ないのではないでしょうか。
具体的に申し上げますと税(103万円と150万円)で社会保険(130万円)でその計算方法が異なります。
誤った認識で損をしなようにするためにも、しっかりと理解をしておく必要があります。
税はこれまで(過去)の実際の収入額、社会保険はこれから(未来)の収入予定額
税の場合は暦年ベースで過去の1年の収入です。
2018年の扶養の判定をする場合は、2018年の1年間の実際の収入額で判定します。
一方の社会保険の場合は、これからの収入の見込み額で判定することになります。
具体例1~年末で退職した場合~
妻の2018年年末で退職した妻の年収が200万円であった場合、2018年の税の扶養に妻は入れません。
しかし、退職したことで今後の収入は0(後述する失業保険の受給はないものとして判定)ですので、退職した日の翌日から社会保険の扶養には入れます。
通勤手当等は税金の計算上は収入とはならないが、社会保険の計算上の収入となるもの
収入として取り扱うものにも税と社会保険には違いがあります。
通勤手当(非課税限度額)、失業手当については、税の方では収入として取り扱いませんが、社会保険の方では収入として取り扱います。
具体例2~通勤手当の取扱い~
Aさんと(給与月10万5千円、通勤手当5千円場合)とBさん(給与月11万円、通勤手当0円)がいるとします。
どちらも通勤手当の含めた給与の月額は11万円で年間合計は132万円です。
Aさんの場合は、通勤手当を除いた月額は10万5千円で年間で126万円(130万円以下)です。
Bさんの場合は、通勤手当を除いた月額は11万円で年間で132万円(130万円超)です。
この場合、社会保険の扶養には、AさんもBさんも入れません。
税の計算においては、通勤手当は非課税として収入として扱われませんが、社会保険の場合もそれも含めて判定しますので、AさんもBさんも通勤手当を含む総額の132万円で判定することになり130万円を超えていることから扶養に入れないことになります。
具体例3~失業保険を受給する場合~
具体例1の妻が退職後に失業保険を3か月間、毎月12万円づつ受給する場合は、失業保険を受給するこの3か月間は年換算で144万円(月12万円×1年間)の収入がありますので、130万円を基準を超えることから扶養には入れません。
失業保険の受給期間が終わった後、無職で収入がない場合やパートの仕事を見つけたが月の収入が10万8千円(年換算で130万円以下)までの場合などはこの時点から社会保険の扶養に入れることになります。
また、この年の税の扶養については、失業保険は収入に含めずに、失業保険の受給後に見つけたパートの収入の年末までの合計金額で判定することになります。